絶望
葉leaf




世界中の海から集められた
追いきれない広さと迫りきれない深さ
あるいは群れをなす魚の一匹が発した
どこまでも届く一瞬の輝き
そういうものが
個人のはるか遠くまで開け放たれた
借り物の一室に湿り気を届ける
それが絶望だ

絶望は一つの生命を持ち
個人の生命と交信して渦を分かち合う
絶望から贈られる湿った渦の構造は
極めて難解で飛散していて
個人の人格はそれを収集し解明するために
どこまでも低い沙漠へとさかのぼっていく

絶望はとても明るい海の光
そして人をとても暑い沙漠へと連れていく
その明るさがまぶしくて
その暑さに膨大な汗をかき
個人は雨の日の電柱のように
大きく背を伸ばしては
物思いと覚醒を繰り返す
開け放たれたドアから
誰からともしれない手紙が届くのを待ち続ける
その手紙には一言
また会おうね、と書いてある


自由詩 絶望 Copyright 葉leaf 2015-06-17 05:07:37
notebook Home 戻る