藤と桜
ただのみきや

藤は支えが欲しかった
己が生きて行くための

桜は藤を必要としなかった
だが支える力は持っていた

今では一本の木のように
鬱蒼と密にからみ合うが

異なる性を持つもの同士
時を違えて咲き また散る

桜は艶やかに散り際もまた
はなびらは赤子の肌のよう

だが藤は乾いた涙のよう
いのち抜けたはなびらの蒼さ哀しく

共に生きるというには
あまりに偏った関係だった

厄介者に取り憑かれた
不幸な桜の木

取り憑かなければ生きられない
悲しい藤の木

もう分かたれることもなく
倒れる時も一緒だろう

それが幸せか不幸せか
本当は誰が知りえよう

生い茂った桜の葉に抱かれ
きょう藤の花が泣いていた



         《藤と桜:2015年6月2日》







自由詩 藤と桜 Copyright ただのみきや 2015-06-02 22:44:14
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