あまいこと
岸かの子2

赤ちゃんの匂い 柔らかい肌の匂い
ふわふわの肌着の匂い あたたかいホッペの匂い
新生児のウンチは 美しいきいろ
お日様の下でひなたぼっこした後の
どんな高価な石鹸の匂いよりも
甘くて 柔らかい ふわふわ

年頃の女の子は
石鹸の香りがするコロンをつけたがる
そんなものより 心をみがく練習を
        やってほしいと思ったのは私

いい感じの男の子は
汗の匂い それが青春なのにもったいない
そんな気持ちより 色んな壁にぶち当たっても
         ひるまない自分を持てと思うのは私

そろそろのおばさんは
自分へのご褒美にと No.5を買ってしまうヘソクリで
石鹸の香りがする娘といい感じで汗の匂いがする息子らは
こぞってこんな事を言う
「お母さんの匂いはそれじゃない」
「エプロンの匂いがいい」
なるほど。
少しだけ、未だお母さんなんだなと振り向いて笑ったのは私

No.5は封印しよう こぼれないように全部くるんで タンスに閉まって
お母さんが おばあちゃんになった時
婦人会のバスツアーでもそのときに
こっそりつけてもいいのかねぇ

おばあちゃんになった時 きっと赤ちゃんの頃の
子供達を思い出しては
あまい匂いを楽しもう
それが一番の親孝行だよ


自由詩 あまいこと Copyright 岸かの子2 2015-06-02 00:46:22
notebook Home 戻る