おとなロボット
ただのみきや

おとなになれなかったこどもは
おとなロボットに乗った
大きくて頑丈 パワーがあって
こどもには持てない武器をたくさん搭載していた
こうしておとなロボットは戦場へ出て行った
いったい誰がおとなで
どれがおとなロボットなのか
外見からはわからない
本当はどちらが多かったのだろう

ロボットは「大人マニュアル」通りに操作すればいい
あとはロボットがすべてをこなす 
独自の判断はしなくて良かった
最初は手間取るが
慣れてしまえば楽ちんだ
縦並びの指令系統と
横並びのチームプレイ
出る杭は打たれるのだが いつのまにか
抜きん出て上に立つ者が現れるのだ

おとなになれなかったこどもは
ロボットを自動操縦することを身に着けた
ロボットの中で爪を噛みながら
自分が人々のために大活躍する物語や
昔の同級生の女の子と愛し合う夢を見ていた
ロボットは時代の流行りに合わせて
外観のデザインを少しずつ変えて行った
時々新しい機能も搭載したが
いつのまにか失われた機能も多かった
長い戦いであちこち被弾して
傷や凹みもたくさんあったが
いつも塗装で目立たなくうまく誤魔化していた

ロボットは旧式となり
やがて戦場を去った
するとだんだん動きが悪くなり
あらゆる部分が劣化していった
むき出しの感情を変換して
そとづら良いものにする機能は停止し
わがままや疑心暗鬼を制御するリミッター《理性》も壊れていた
名前を検索する機能も親しい人や身の回りの物まで
どこかが断線したようにつながらない
奇妙なバグだけが思考回路に増殖していった
時系列は完全に解き放たれ
今起きたこともメモリーできなくなった
モニターが真っ白になることも多くなった
ロボットはもはや
ただのハリボテだ

誰かが言った
「あの人は呆けてすっかりこどもに戻った」

そうじゃない 本当は
ずっと こどものままだった
おとなロボットから
やっと 自由になれたのだ



            《おとなロボット:2015年5月30日》








自由詩 おとなロボット Copyright ただのみきや 2015-05-30 18:22:58
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