雪の日
opus

その日、
僕は小学3年生で
塾の帰りだった
家の最寄りの駅まで着いて
ホームを出たら
あら、びっくり
見慣れた街は
雪に埋れていた

その日は記録的大雪で
世界はシンと静まり返っていた
あぁ、こんな日もあるんだな
不思議だなぁと思って
目を閉じて
空気を吸うと
体中に冷たさが響いた

地面は雪に埋れていて
どうしたもんかと
とりあえず、公衆電話から
家に電話した
すると、
「わかった、
迎えに行くからちょっと待ってて」

僕は母親の車を待つために
近くのベンチに腰掛けた
遠くの方で
お婆さんが柴犬を散歩させていて
転げ無いか
冷や冷やしていた

見慣れた街は
僕の知っている街ではなかった
全ての響きが
全ての囁きが
全ての瞬きが
何もかもが違ってみえた
吐く息さえも白く、
まるで命が零れでているかのようだった

お母さん、早く来ないかな

「お待たせ。」

そう声が聞こえて
前を見ると車が見えない
ザクザクザク
足踏む音が聞こえて
そちらを見ると
長靴を履いた母親が
ゆっくり、大股で
こちらに向かって歩いて来た

「寒かったでしょう?」
そう言って
ニット帽と
手袋を付けさせた

「こんなに積もってびっくりしたねぇ。
寒かったねぇ。
お腹減ってない?」
帰り道の途中で僕らは
ケンタッキーに寄り
クリスピーを買った
左手で母と手を繋ぎ
右手でクリスピーを食べながら
家路についた

そのクリスピーは本当に
本当に美味しかったんだ
その事は
今でも覚えているし、
多分、
二度と忘れることはないと思う




自由詩 雪の日 Copyright opus 2015-05-21 20:04:14
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