楔が欲しかったのに
noman

近い距離
想像できるよりもはるかに
近すぎて
見るときに痛みを感じることも
できないような距離に
光源があった
安っぽい紙を巻いた芯が
屹立している
その光源から柔らかな
色彩がいくつも
流れだし
種々雑多な
熱が重なり合う

影のない方の手が
緩やかに伸びて
澄み渡った青空の日
ショッピングモールの駐車場の
一隅で
空を掴む
雲は今にも止まりそうな速度で
どこからか聞こえてくる音楽も
一秒
ごとに遅くなり
影のない方の手も それ
以上は伸びない
急に視界が開けて
目の奥が重くなった
その重さは速やかに全身を
浸し
真新しいアスファルトの上へと
滲み出て行った


自由詩 楔が欲しかったのに Copyright noman 2015-05-21 01:38:41
notebook Home 戻る