花の殻 湧く、次々と
ヨルノテガム




 「道を渡って、手を振る」

 骨のコツコツ鳴ります
 糸の編むように眠ります
 サバ缶とサケ缶の区別はつきます
 お尻から椅子に座ります
 迷路の続きにまた迷います


 森と林と木を考えながら森林木浴してみます
 オシャレのことをオサレと言ってみます
 髪の毛の散髪に行こうと一ヶ月思っています
 丸い果実を並べて惑星の話が始まります
 転がっている蝉は死んだふりです


 塩と砂糖の区別に臭ってしまうクセがあります
 骨の鳴るポツポツを忘れます
 唇の端から幽霊こぼれてます
 雷の音が晴れ間に鳴ると怖いです
 弦が切れたり笛が骨だと驚きます
 口笛は歩いて家へ帰るものです


 *

鹿や牛や羊は草を食べて生きてゆける なんだか不思議
猛毒の物質を食べる微生物がいるというニュースがあった
空気中にプランクトンみたく栄養があれば 鳥は大気圏から
降りてこないだろうな泳ぐように
言葉を食べる宇宙生物 あるいは見えないものを喰らう生命が
(たとえば円や図形のようなもの)として存在していたら
存在していても・・・元素、僅かな成分の違いが空気全体を
組み替えて従えていたり・・・
わたしはこの頃、この世界に馴染んでしまったのか もう
サヨナラしてしまうのか社会にある価値観や物差しが
偽物のシステムで満たされているように感じている
しかし逆に 本物や本質とは何であるのか、何が表されて
現れているのか、点をたどる、点線の旅を巡っている、
巡っている日々なのです



  「宙を舞う」


 背中の中心が凍えて
 太陽も波も此処に無い
 ひとり歩きする脚が鉄の底へ溺れた
 首に穴でもあいてしまえば、息は。
 渦巻く緑の空に押し埋もれる声、声

 向かうべき方角が無関心の吹きすさむ奥
 何かを掴んだはずの腕は飛び
 指は嘆きを動き囁く 予告もなく雨が
 言葉のカケラを不明瞭になるまで打ちつけ破戒する

 月へかかるハシゴを登っていたロマンチストは
 誤って最後、月を踏み抜いてしまう
 刺さるようなものを抱え続けてきたが
 しばらく引力や重力に出会えそうもない
 月へハシゴは届いたか
 ロマンはあなたの何なのか
 ひとは何が誤りだと気づくのか
 いつ




 *
(以下、落書き)

かつお節みたいなその笑顔
鰹節な笑い顔
わさびの辛さに甘える涙目十八歳
鰹節だよ 人生は
あの娘、みりんみたいに光ってる


眼鏡の前を流星が走った
筆と紙が尖った笑った
マイクが耳を塞いで壊れた
鱗に夜明けが映りはじめた
砂山のトンネルの向こうからオレオレ詐欺が
手を伸ばして開通してくる
鯉のぼりがおにぎり食べて
おにぎりは鯉のぼりに喰われて転がって出て


毒が補給され配給される列にヘビ
自分を何も知らない、自分と何も関係してこなかった
自分と瓜二つの人間が突然現れ
自分と関わる周りの全てのシステムを変更していくと
皆は笑顔に平和に、世界

・眼鏡のレンズにまぶしい光の星は流れ落ちて消え
・彼女の筆は走り 紙に描いたものが手順どおりに
 紙から浮き上がって放れ
・鱗に一夜一夜の記憶データを
・砂山のトンネルを手で開いて覗くと見たこともない
 美しい女の鰹節みたいな笑顔が待っている
・おにぎりの木
・春に夏を待つ 秋過ぎる冬 再びの春に目を凝らす


  わたしは春に夏を待っているのか
  夏にはもう秋を待っているのではないだろうか
  秋は過ぎ冬、冬眠するように過ごし
  再びの春に気炎を上げて対峙する
  新芽のまぶしさに遠く目を細め
  消していった全てのことを誰かが再生し
  変更してゆく仕組みに目を凝らしている


 *
 湯船に手が浮かび 向こう岸の肩へ上がると
 滑り落ちこむ つづき唇が慎重にうなじの崖を
 登りゆくのね 黒髪の闇夜に旅人迷い
 小鳥の悲鳴に怯えながら
 花咲く安息の丘の夢に忍び込む蛇となる


 *
 花の殻  花の殻

  湧く     次々と



  変伸

 神様という存在はひとりの人間よりももっと長く生きて
 種類を換えて移り変わり、生物に留まらず、遥か物質の
 時にも長い長い変化をもよおしていた そして
 この世のあらゆる物質や物体に必ず一度は神が宿って何度も
 何度も すり抜けて すり抜けて変化を起こし続けている
 神の足跡を確認したとき、人間は発見し驚くのだが
 変化すること自体の道筋には巨大な神の運行に
 満たされている衝突地点、作用し反作用している成り行きの
 点、線、点、線、点、線、、、、、、、、、



  花の殻 湧く、次々と



(変身ではなく 
  変化が絶え間なく伸びゆく)



  幽霊が立ち上がる
  幽霊が椅子に腰掛ける
  それは暗がりにティーカップを持ちお茶をすする
  それは透明に近く、持っているそれも透明に近い
  幽霊は美人で若く白いワンピースなどが似合うと
  なおよい
  幽霊は恨めしげながら肉感的なバディの主張を
  押さえきれないなら、なおよい

  それは立ち上がり
  それは別の椅子にまた腰掛ける
  幽霊はしばらくして別の女幽霊の友だちとおち合い
  店の外へエスカレーターに乗るように
  スーっと出ていった
  おしゃべりのひとつやふたつ、賑やかなヒールの
  足音がしたのかもしれなかった




  *




  虹は音楽の
  七色十色それぞれ夢が
  合わさっては消え、再び始まっては
  初めての模様を
  未来が急に顔を出して
  過去の眺めもとてもイイわ
  うそのように踊りが上手
  悩みの正体を打ち明けたりしちゃって
  四季の花が添えられ
  いままでの よこしまな当たり前が
  次々と塗り変わってゆく先端よ
  ほら、やっぱり踊りが上手
  虹は音楽の
  そして自由で偉大な天に届く、返ってくる
  これは私たちの為の供物かしら













自由詩 花の殻 湧く、次々と Copyright ヨルノテガム 2015-05-16 05:38:34
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