物化
……とある蛙

君の右側がどんどん物化してゆく

歩くこともままならない
食事することもままならない
まして字を書くことはままならない。
自分の署名すら出来ない。
君は苛々する。

もうだめかも知れない。
自分は何もできない
世間でも 必要な人間ではない

などと 弱音を吐く君を見つめる僕は
本当に何もできない人間です。
僕は君の身体を治すことは出来ない。
ただ、君の身体を支えているだけです。
君の今日の日常生活につきあっているだけです。

愛も死も見つめようとしない。
目を背けて、通り過ぎるのを待っている
意気地なしな僕を許してください。

そんなことないよ。
なんて言えない
僕自身,
君の病を治すことはできない
でもそんな弱音を吐くこともできない。
本当に何もできない人間です。

君がいなくなるのが恐ろしいのです。
君と話ができなくなるのが恐ろしいのです。
君を見ることができなくなるのが恐ろしいのです。

三六年前からずっと
本当にずっと毎日一緒だった。
学生の時は特に四六時中一緒だった。
いま、そんな君が物体になろうとしている。
それをじっと見ている。

そして、君が物体になった。


自由詩 物化 Copyright ……とある蛙 2015-05-14 16:47:33
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