サヨナラ言えなくて
藤原絵理子
きみの悲しげな 薄茶の瞳が
雨に濡れた 捨て犬の耳に重なる
愛してるんだよ と 大きな声で
もし あの雨の日に戻れるのなら
真っ直ぐな思いに 応えられなかったのは
どこかに 罪の意識があったから
マロニエが 咲き始めている
色とりどりの傘が 橋を渡っていく
別の世界に いたかもしれない
冷たい言葉を さえぎって
優しい言葉で包んで 抱きしめてくれたら
町を出たと 誰かに聞いた
きみの忘れ物 生物学の講義ノートに
几帳面な文字が並んで あたしを責めている
自由詩
サヨナラ言えなくて
Copyright
藤原絵理子
2015-05-08 22:54:35