妖精の森
未有花

処女おとめはその森に入ってはならない
森に入ればきっと出会ってしまうだろう

そして血よりも紅いその薔薇を手折ってはいけない
薔薇を手折ればきっと恋に落ちてしまうだろう

それはたぶん好奇心なのかもしれない
未知なるものへの恐れと憧れ

いけないと言われるとなおさら
その禁を破ってみたくなるものだ

ささやかな抵抗を試みるために
私はその森に入ってそして出会ってしまった

これが運命でないとどうして言えるだろう
血よりも紅い薔薇を手折った私は
たちまちあなたと恋に落ちた

蜂蜜色の髪と新緑の瞳をしたあなたからは
森と風と光の匂いがした

あなたは妖精の捕われ人で
七年ごとの地獄への生贄に
自分が差し出されることになったという

あなたは私の瞳をみつめてこう言った
今夜妖精の騎馬行進の中から
白馬に乗る自分を助け出して欲しい

僕がさまざまなものに変わっても
決してその手を放さないでと

私にあなたを助け出すことができるかしら
妖精の騎馬行進の中へ入って行く
そんな勇気が私にあるかしら

いいえきっとやり遂げてみせるわ
何があってもその手を放したりしないわ

それはこの森に入って薔薇を手折ったときから
私に課せられた運命だから
今夜必ずあなたを取り戻してみせるわ


自由詩 妖精の森 Copyright 未有花 2015-05-07 09:18:09
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