真昼のビルディング
葉leaf




真昼のビルディング!
光があかるく暴くすべてのものを熱として放射し
時刻がリズミカルに告げる難問をその構成で反駁し
太陽の地上への君臨をその巨きさの中に摂り込み
青空が拡散していくのにあわせて自らの広がりを拡散させる
澄みきった建築的情熱が今
街中の道路に素早く流し込まれていく

立ち昇った炎の柱でもあり
長い時間をかけて固まった氷の柱でもある
真昼のビルディング
永遠に燃えながら永遠に凍っている
昼の陽射しに対しては炎でもって応え
夜の闇に対しては氷でもって応える
内側の配管には光の卵がいっぱい詰まっていて
昼と夜の循環に飽和したとき
いつか光として爆発する

真昼のビルディングは
太陽が正午よりも高く昇る日を待ちわびている
正午に近づくにつれ
立ち上がる準備と伸び上がる準備と歩き出す準備をするのだが
いつも太陽はそれ以上昇らない
真昼のビルディングは正午に漲った力を緩めていく過程で
街の歴史をその構造の中に埋め込んでいく

真昼のビルディングは
いつも人間という神に対して畏れを抱いている
自らを設計した神がいることを
おぼろげな記憶で覚えている
だが自らの中を通行する小さな小ずるい生物が
まさか人間であるなどと思ってもみない
真昼のビルディングは正午に人間に祈りをささげる
その祈りはビルの中の生物には決して届かない


自由詩 真昼のビルディング Copyright 葉leaf 2015-05-06 06:50:20
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