アキラ
吉岡ペペロ

ディズニーランドにアキラは連れて来なかった。

きのうもうアキラは川に捨てた。

アキラのためには1メートルの穴さえ掘れなかった。

アキラに対する愛情は1メートルもなかったのだ。

川ほどはあったのかと聞かれても分からない。

川がどれほどのものなのかも分からない。

ぼんやりとした希望のようにディズニーランドに来ていた。

旦那とこどもたちがあたしを中心に放射線みたいになって歩いている。

あたしたち家族はまわりと比べてみんなちいさい。

からだ以外ぺしゃんこだった。

ピノキオが空いていたからピノキオに列んだ。

アキラは悪い子だった。

あたしのものをよく壊した。

なんど叩いても治らなかった。

アキラには自殺願望でもあったのだろうか。そんな話をよく旦那とした。

ピノキオをこどもたちは喜んだ。黙って喜んだ。喜んでいる波動がつたわってくる。

お昼はどこも混んでいた。

旦那は空いてる店を探しにいって姿を消していた。

旦那とはブラジルサンバ同好会で知り合った。ネットで知った同好会だ。

そこで合コンがあって旦那とあたしは意気投合した。

旦那とあたしは会うと弾みっぱなしだった。ラグビーボールみたいに。

店を見つけたみたいで旦那が戻ってきた。

一瞬アキラが戻ってきたような気がした。

糞をされたくなくて飯は三日にいちどにしていた。

それでもウサギ小屋には匂いが立ち込めていた。

その店はわりと、空いていた。

そんなに列ばなくて良さそうだ。

入るとうすいケチャップがきゅうに濃くなったような匂いがした。

旦那の顔をあたしは覗き込んだ。

アキラを入れていたウサギ小屋の匂いだ。










自由詩 アキラ Copyright 吉岡ペペロ 2015-05-04 20:17:32
notebook Home 戻る