小石
葉leaf




早朝の闇と静寂の中で、私は迷子のように灯りをつけて読書をしている。まだほとんどの人が眠りに就いている中、私だけが朝の闇の中に迷い込んでしまったかのようだ。孤独というものは青春の終焉とともに失ってしまった。私が朝の闇の中で感じるのは孤独ではなく、闇が私を吸い取ろうとする力と私が重力でもって自らを組成する力のせめぎあいである。朝の闇は厳密には静寂で満たされていない。闇がものたちに圧しかかるところで発される、硬い金属音で微かに満たされているのだ。

私は、学校でも職場でも、必ず必要悪の地位に就いた。これは望んでのことではない。社会において当然発生する人間同士の軋轢に、誰にも頼らず独り強硬な態度で臨むと自然とその社会のボスになる。連帯のネットワークに逃げて間接的に軋轢をごまかすのが通常の組織人だ。だが私は決して誰にも頼らず、ただ独りで相手をやり込める。そこまで強固に自我が独立している人間は組織には珍しく、自然と私は必要悪となる。

朝の闇の中で、独り闇の中に迷い込んでいる私は、まさに社会における必要悪としての私である。社会という偶然のつらなりの雲の中で、独り自らの光を保ち続ける私は、朝の闇の中で闇の吸収力と闘っている私に他ならないのだ。私は精密に構成され、硬く組成された一つの小石である。周りを取り囲むのは柔らかい植物や動物ばかりかもしれない。だが私は独り、鉱物として自ら固く身を守ると同時に相手を傷つける能力を持つ。

朝の闇の中で、私は四方八方から闇に誘惑されるが、それに対しては小石としての自立自尊で対抗する。同じように社会の中で、私は四方八方から柔らかい生き物たちの支配欲にさらされるが、それに対しても小石としての硬さと素早さで対抗する。小石はそもそも生物たちのネットワークに入り込めないので、誰とも連帯できない。だが、小石には悲しみや寂しさのような感情もない。ただ、自らの構成を保つ強固な意志だけがある。私は小石、今日も必要悪として、悲しむ間もなく独り意志的に生きる。


自由詩 小石 Copyright 葉leaf 2015-05-04 03:15:52
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