詩人サークル「群青」4月の題詠「土」
木原東子
「春の土」
よりそひて小川とあぜ道蛇行せる二月の畠に耕人ひとり
音なくて雨降りゐたり 静かにも春を見上げて庭辺の千草
うんうんと地よりわきたつ緑児を雨とお日さま交互にあやす
一坪の土の中より生れ止まず命の光を注がれ止まず
くろぐろとかぐはしき畠 目も舌も耕すも幸あした豊穣
三角地に可愛く畝の立ててあり葱の出づるやひとり居なるや
我が煮炊きおざなりなれど愛づるもの地より生れたるなべての緑
やはらかき雨の夜明けて春の陽よ畠も鳥もそはそはとせり
お馴染みの庭のものたち顔出すも後生の花の玉芽見えざる ==ハイビスカス
猛き草の刈り取られたる更地よりなりそこねたる竜巻の子立つ
吾といふ竜巻襲来ダンゴムシの団居(まどゐ)の夢を壊してしまひぬ
「土と力技」
朝顔にまみれて我は山男地を噛む蔓を渾身ひき剥ぐ
地を嚼んでゐる昼顔の長き蔓 引き剥がしては太く束ぬる
東京の地下を降りゆくほどにG増せばや思ひ哲学的に
東京の地下の深きにインフラの秘密の迷路作られてをり
コンクリに落暉眩しきレインボーブリッジいつか地下へといざなふ
海底にトンネル掘るとふ力技たれかのサウンド享受して座す