からす
島中 充

人は
どのように生きてきたかを子孫に知らせたいのだ
知らせなければならないのだ
どのようにして人間は生きてきたかを

私はきのう見た夢の事を思い出していた

海岸に乾物のように干からびた死体
それはおれの弟だと父は言った
蠅の黒くたかった死体 孤島で戦死した弟だと言った
流木を集め 浜辺で火葬にしよう
湿った流木は小さくしか燃えなかった ちょろちょろと燃えて
腹から
太腿から
眼球から
出てくるわ
出てくるわ  
うじむし
そして父は指さしながら 口を開いた 
そのうじむしを食え
そのように人間は生きてきたと

海のかなたから 
密林の奥から
色々な鳥が集まって来た
死体の周りに這い出してきたうじむしを 夢中でついばんだ
 
うじむしをついばんでいる
私はカラスになっていた 


自由詩 からす Copyright 島中 充 2015-04-30 01:38:55
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