何も持てなくなった日に
奥畑 梨奈枝

無能と言われ慣れ
居場所など無いと言われ慣れた
アルバイトは首になり
とうとう愛する者など現れない
俺の王国がなくなってしまった
人達が二つに割れるのを見た
そしてその両方が俺を追い出した
俺は人が好きだと言うが
きっと誰からも相手にされない
SNSを伝って人と会い
人を愛した気になって
人を嫌う病人になって
いつも何かを持ちたくても叶わず
俺は次第に何も持てなくなった
苦しいとき悲しいとき
俺は肌を引っ掻いた
皮が剥がれて血が漏れて
それでも肌を引っ掻いた
誰にも必要とされないとき
誰にも邪魔をされないとき
インターネットに書き込む
笑っちまうな
とても深刻とは思えない
ざまあみろ
俺は吸わない煙草を箱ごと燃やして
不味いコーラを飲んでは捨てた
小説を3ページ読んで止め
短い動画も途中で飽きた
すでにもう何も持てなくなっていた
俺は何ともわからない人毛が散らばる
汚い部屋の中で
神を八つ裂きにしたいと思った





自由詩 何も持てなくなった日に Copyright 奥畑 梨奈枝 2015-04-18 21:24:07
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