モノゴトのはなし
ただのみきや

それはモノゴトとの距離の問題
モノゴトが遠くにあれば小さく感じて
モノゴトが近くにあれば大きく感じる
時間もひとつの距離だ

あるいは他のモノゴトとの比較の問題
モノゴトの傍にもっと大きなモノゴトが現れれば
先のモノゴトは小さく見える
現れたものが小さければモノゴトは大きく見える

いったんモノゴトに取り憑かれると
寝ても覚めてもモノゴトで頭がいっぱいだ
コインで両目を塞ぐように
だけどモノゴトの魔法が解けたり
別のコトが気になり始めると
以外にたいしたモノゴトではなかったと
臆面もなく言ったりもする

モノゴトの大きさは変わらないのに
大きく見えたり小さく見えたり
そう月と一緒
あるいは恋と

誰かの痛みに共感する
折れない足も痛み出す
経験と想像力
あるいは隣人愛
だけど毒気に当てられて
我を失うことのないように
感じることは受け身だが
考えることは自己責任

ひとの頭の中にはそれぞれ尺度がある
貝殻みたいに固いやつが
けれど心は軟体動物並で
伸びたり縮んだりいいかげんなもの

互いの物差しを振り回すチャンバラごっこより
綾な言葉のイトを上手に取ったり渡したり
そんな遊びに夢中になりたい
楽しくなって時間を忘れ
大きくも小さくもない
ひとつのモノゴトが
夕日のように燃え落ちて
きれいに消え去る
その日まで



             《モノゴトのはなし:2015年4月15日》






自由詩 モノゴトのはなし Copyright ただのみきや 2015-04-15 21:32:09
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