草履の女性…〜その瞳をみていたら〜より
黒木アン

招かれた小さな部屋で
積み上げられた草履に
何もなかったように
淡々と話す貴女

励まされたのが
私であることに
なんとも情けなく
なんとも嬉しくもあり

紡いだ貴女の指も
筆を持つ私の指も
いつか襷(たすき)を
かける手になるのを
知ってか

裸で受け取った草履を
桜色の風呂敷で
包みたかったのは
その薄霞の頃に
また こうして
青い浴衣が干された
軒の下で
交わしたかったからで

迎える短日の日々に
どうか
極寒の夜がないことを
願っています


自由詩 草履の女性…〜その瞳をみていたら〜より Copyright 黒木アン 2015-03-27 08:04:50
notebook Home