色覚と怠惰
初谷むい

ほんとうは、虹は七色なんかでは無く、もっともっと、
ぼくたちにわからない色をふくめているらしい。
その原理に基づくと、ぼくたちがきれいだきれいだと
ほめちぎる石鹸水も、計算された形の高いほうせきも、
ふくふくとしたきみのほっぺたの白い毛の色も、
ぜんぶ、ただしくは知れないということなのだろうな。
しれない。簡単な事実だ。
すべての言語、きみのDNA、もし知りたいとせつぼう
したところで、手に入れることはできない。せつぼうは、
ぜつぼうと似ていることにぼくは気付く。うまれ方もしに方も、
現在のぼくにはわからず、晴れている日の窓際でだって
ぼくは贅沢にぜつぼうしている。
ひがうごいてゆく。
嗜好品にかねをだしたり、ころころ転がったりしていないと
いちにちがおわらない気がして、ぼくはきみにメールをうったり、
かわいらしく「、」の多いきみのメールを読みなおしたりして
じぶんのくるしくなさを確かめたりする。とても
しあわせなぼくは戦争映画も、悲恋の映画もみないし、よくわらう。
安心な毎日を台無しにされたくて、きみにメールをうつのです。
ばかだといって、悪口を言って、きみにもぜつぼうしてほしい。
そのときの、きみのほっぺをみたくって、ぼくときみは
たぶんともだちでいるのだとおもう。


自由詩 色覚と怠惰 Copyright 初谷むい 2015-03-23 15:08:39
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