にくしみ(要冷蔵)
木屋 亞万

にくしみ(要冷蔵)

うつくしい女たちの化粧が
ポリゴンに近づいていく
服はムダがはぶかれ
生地は豪華になる

腹の中のにくしみが腐っているのが
外側から見ていても分かる
にくしみはいつでも
冷やしておかなければ

恋だって開封後は冷暗所で保存すべきだというのに
枠外の説明を読まない人たちは
一度ひらいた恋を
高温のまま放っておく

恋をすればするほど女がうつくしくなるなんてのは正しくない
いくつもの恋を密封容器に保存し
冷蔵するストックが増えるほどに
女がかがやいていくというのが正しい

腐ったものがもう一度新鮮になることはないし
発酵や熟成といった良いものと腐乱は全く別物だ
にくしみに塗れた恋は捨て去る他ない
熱すれば熱するほどにくしみは臭気を増していく

口を開けば臭い悪口を言うようになり
何もかもを他人のせいにする
情報を誤って受け取ることが通常化し
やたらと上から目線で語るようになる

芯から腐っていく
外側だけが作り物のように飾り立てられながら
内奥から腐っていく

にくしみを冷やせ!

腹の中でにくしみが
煮えくり返らないように

核心から
みずみずしくいられるように

恋の開封後は殺気が入らないよう密閉した後
直射日光の当たらない湿気の少ない涼しいところで保管し
お早目に天に召されてください


自由詩 にくしみ(要冷蔵) Copyright 木屋 亞万 2015-03-21 00:13:04
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