ヨシ原(石巻市)〜その瞳をみていたら〜より
黒木アン

もがり笛もすぎる頃
手塩にかけました
刈りとりも
人心地がつく時

ほの香る土に
なにかたのしく
火入れの祭りが
はじまりました

母の好きでした
垂れ桜が満ちる時
十三浜ワカメを供えながら
つくしを煮ると喜んだ
あの縁側を思いだし

ヨシの新芽がでたという
父の声をききながら
鳥の羽ばたきにも
耳をむけ
ぼくの背丈をこえていった
夏の空を思うのです

ヨシの「結」はな
親子のタテ糸と
兄弟姉妹のヨコ糸を
和に結びあうようだな

慈味あふれました手は
時に神に手をあわせ
時に赤子をだき
時にしおたおれるなと
頭をなでてくれました


その心
今はぼくの
たなごころの中に


自由詩 ヨシ原(石巻市)〜その瞳をみていたら〜より Copyright 黒木アン 2015-03-18 06:59:04
notebook Home 戻る