郊外の風景
藤原絵理子


しばらく前まで そこには山があった
ショベルカーの快活な饒舌や
ブルドーザーの笑い声と共に
預金通帳に増えていく 零のよろこび


狸は自動車のライトに眼が眩んで
白いセンターラインに立ち竦む
間合いを知らない鼬は
疾走するダンプカーに踏み潰される


同じ顔をした 街ができあがり
同じ顔をして 人々が一様な暮らしを始める
時の移ろいは いずれ街を滅ぼす 老いさらばえて


真新しい遊具の 公園に遊ぶ母子は 
古林の住処を追い出されて来た
鴉と鵯の縄張り争いを見て 怯えている


自由詩 郊外の風景 Copyright 藤原絵理子 2015-03-17 20:51:28
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