あまざけを
ドクダミ五十号

あまざけをあげようか

ひさめふるよるだから

こごえてつらいだろうから

うっすらあまいだけだけれども

えいようはありますよ

そう言って五平は
すり鉢でつぶして作った餅と
とっておきの甘酒を
行き倒れ寸前の旅人に

五つの平でありなさい
鴨居にかかる額入りの写真
おばあちゃんは言っていた

五平はその夜
夢を観た

梅も桜も桃も
一度きに咲いて
水田には満々と水があり
稲の葉は緑濃く

遠くから死んでしまったおかあさんが
日傘を捨てて五平に大声では叫ばず
おいでなさいと
抱く仕草

夢から覚めた五平は
悲しんだでしょうか

いいえ
おかあさんのぬくもりが
こころのおくそこに
きちんとありましたから

五平は家も田畑も売り払い
お店を出しました

何のお店でしょうは野暮です
勿論
甘酒と焼き餅の
味噌の香りと
麹の香り

とても繁盛したそうです



自由詩 あまざけを Copyright ドクダミ五十号 2015-03-16 19:19:02
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