ふたつ 満ちて
木立 悟





紙を折ると
斜めの方へ
出てゆこうとする
かすかな影


影は影のまま雨になり
花に触れ また影になる
暗がりを映す水
時計のような足跡


光の点が
沈まずにまだ水の上に在る
夜へ向かう森
片羽の森


午後を吐き まだ
午後で居る
痛みに慣れ まだ
多くを失くしたことに気付かずに居る


痛みは 花だった
涙が
それを
咲かせた


鏡に映る文字のすべてが
すぎる時間を表している
鏡の外へ去ってゆくもの
晴れた午後を曇らせるもの


合わせ鏡 紙の鳥
陽の前をゆく無数の蕾
手のひらのはざまの
無数の午後に咲いてゆく



















自由詩 ふたつ 満ちて Copyright 木立 悟 2015-03-11 21:28:19
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