こぼれる
ただのみきや

九十九つづらに折られた時の束ね
行きつ戻りつ
差し挟まれた幾つもの文から萌えて
息吹く面影がある

月が像を失い
奔放な青と黄が眼裏を揺らす夜に
散り積もった悲色の花びらから
すっと立つ細い声がある

いのちはふり返らず
見送るだけ
心は旗のように激しく翻る
風の吹かない廃墟に刻印として

芽吹く希望が殻を脱ぐ
軽やかな飛翔が幼子の夢が
空を埋める
――どこかで綱が切られる

バラストのように落ちて
停止した者
すべて拒んで飲み続けた
誰にも憶えられない濁った涙がある



            《こぼれる:2015年3月11日》








自由詩 こぼれる Copyright ただのみきや 2015-03-11 18:45:00
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