停車場 
オダカズヒコ



使っていない手帳を時々めくる
明日の予定はどこにも書かれていない
その余白が持ってる白は
明日になっても
やっぱり空っぽのままなんだ

約束で繋がっていた
あなたの名前と日付も
もう書かれることも
ないんだ

猫科の動物に似ていたあなた
晴れた日に路地を入った狭い店で
痩せた野良猫のように肩を並べて
座っていたぼくら

明るい陽の下で
カウンターに孤独を並べ
座っていたぼくら
たまには店を抜け出し

列車に飛び乗り
あの標の立つ街まで行ってみようか

そこはとっても遠い場所だから
空っぽの手帳に書き込む
ファンの鳴る部屋で
ペンをとると遠い所にある
あの日のあなたとぼくを
身近に感じることができる気がした

許される筈のなかった契りが
夜の街灯に火を灯す
やあ
元気にしてるかい?

今夜もカナン行きの停車場じゃ
切符の配給待ってる人々でいっぱいだよ
青白く光るレールをたどって
恋人の手を握りしめ
高原をふたつと
大河をみっつ越えれば
心配しなくたっていい

明日の晩もこの分じゃ
カナン行きの停車場はびっしりさ
みんな不幸な顔をしているが
待っているのは幸福だ

使っていない手帳を時々めくる
明日の予定はどこにも書かれていない
その余白が持つ白は
放っておけば明日の朝も
空っぽのまま

約束で繋がっていたあなたの名前と日付
晴れた日の路地裏の店
肩を並べて座っていたぼくら
風が運んできた噂
カナン行きの停車場は
人待ち顔の人々で
ぎっしりだ


自由詩 停車場  Copyright オダカズヒコ 2015-03-07 19:22:18
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