崇高なもの
やまうちあつし

五月の風の透明さ
雨上がりの石畳のにおい
雪の朝の静寂
足元をさらう波の清廉さ
出発前夜の胸のざわめき
日曜午後のあきらめにも似た安らかさ
わからなすぎる夜の身もだえ
泳いだ後の満たされた疲れ
老婆の笑顔
生まれて間もない赤ん坊の握力
隣家の飼い犬の落ち着き
近所の野良猫の気ままさ
許せずに泣いた日
許されて泣いた日
信じると言った時の口の形
信じないと言った時のまなざし
校舎上空を漂う雲のあまりの長大さ
夕焼けで燃えそうな西の空
落ちそうな満月
消えそうな三日月
忘れられない
かもしれない
あなたのあだな
崇高なもの
いつか、誰かと、見た、ユー、エフ、オー。


自由詩 崇高なもの Copyright やまうちあつし 2015-03-05 16:26:14
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