連詩〜とよよん様と〜「被災地を知らない私たち」
黒木アン

古色まぶしい
郷愁の地に

歴史と風雨を
たえぬいて

今もなお
多くの涙が
あるのでしょう

子どもらは
幾つに
なりましたでしょうか

孤独に歩み
すすめたことも
ありましょう

人のありように
誠実に
無心の一筆に希い

いつかくる
安定の日々を
一筋みつめて

ここまで
やってきたのですね


陽がなくなりましたら
月をさがして
おりました

満ち欠けは
かわらずに
ああ今日も
命を灯して
いるのですね

蒼い海原は美しく
魚は跳ねて
いるのでしょう

咲かない花も
ありましょう

それでもね

あなたの命が
あるだけで
その尊さに
身震いします


宇宙のいとなみは
数十億年

そのなかで
地球のみの
人としての生

貴い命の連綿に
あなたの宿を
想うのです

故郷の岸を
離れたひとたちは
幾月すぎようとも

想うは名もしらぬ
遠き島では
ありませんもの

心の宿に帰りたいと…


あな恋し
ふるさとよ
零れる悔しさと
沈黙の町は
待っているのね

焼き魚がのる
ちゃぶ台で
大漁に酌み交わした
酒の味を
もう一度と

つつましく
処理されぬ灰色の
仮の宿をみながら
今日を生きてる
人がいる

里山に
海風が流れるときに
囁くヨシ原や
ワカメを炊いた
母さんの手を
知らなかった

もうすぐに来る
曖昧な
あなたの日には
樹木も吐息を
揺らすのでしょう

肉体は仮の宿
一身では気づかぬ
実体に

いつの世も
泣き犯し
また生まれくる


地球が木星に
守られていることを
学ばなければ
あなたを守るものが
わからない

心の旅路の
果てにある
秘密の地が

めぐりくる
つぎの時ならば

どうぞそのときに
また

川の名と
山の名を
教えてください

被災地をしらない
私ですから


桜花びら
くるたびに
あなたが
ひとひら
いるようで

とめられぬ
時はらば
せめて
時によりそい
深くかがんだ
時にでも
それとなく
そばにいたいと
涙散り
薄らぐように


おてんと様に
てらされて
会いにきたいと
生まれくる
命を待って
千年先のその先が
いま願う幸せよりも
もっと幸せで
あるように祈りつづける
東北の
慈しみ
慎み深い人たちの
真実復興
明けわたるまで

水筒の
でこぼこや
誰かが残した
一筆や
いつまいたかなど
知らずの種に
紡がれました想いは
命と未来


等しくあります
ひとつの鼓動
もし
遮るものがあろうとも
誰にも邪魔などできない
心の旅路

浄めの鐘なる
この道で
春の使者愛しく
花びらあつめて

四年目のとき


自由詩 連詩〜とよよん様と〜「被災地を知らない私たち」 Copyright 黒木アン 2015-03-03 22:56:47
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