白紙にむかって歌うんだ
木屋 亞万

白紙に向かって歌えない
声が喉につかえて出ない
途切れながらも出た声は
定着せずにすぐ白になる

白紙に向かって歌っていた
夜が来るたび電気をつけて
蛍光灯に頭を下げて
みじめな顔で歌うんだ

白紙に向かって歌うんだ
わたしはひとりです
わたしはいつもひとりです
だれもわたしをよびません

白紙に向かって歌うとき
声は全く響かない
生存反応のない雪山に
音は吸われて消えていく


自由詩 白紙にむかって歌うんだ Copyright 木屋 亞万 2015-02-25 23:20:24
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