惜しみながら。
梓ゆい

最後を惜しみながら、父の顔に手を置いた。

最後を惜しみながら、閉じた瞼と睫毛に触れた。

最後を惜しみながら、聞こえるであろうはずの耳に話し掛けた。

最後を惜しみながら、車を見送り

山から下りてきた猿達の群れから目を逸らし

最後を惜しみながら、父の棺に礼をした。


自由詩 惜しみながら。 Copyright 梓ゆい 2015-02-24 03:17:53
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