わるいこと
はるな


わるいことをして逃げているので見つかりしだい冷たいようなところへぶちこまれるけど好きなひとがいるので気にしない
似たような境遇を描いた絵や歌や小説がたくさんあるので迷うことはないし自由だ。わたしは右足、好きなひとは左足をわるくしたがわたしたちには意志があるので問題ない。

息をひそめて、見ている河川敷には、浮かんでいる、ごみや、鳥が浮かんでいる。あれはまったくわたしと同じだ、考える、思う、そうしながら、流されたり、舞ったりする。泣いたり笑ったりするのは些細なことかもしれない、でもそうしないわけにはいかない。
わたしたちはたびたび立ち止まっては、あんまりの不運に微笑んでしまう。それは灰色の壁におかれたうすいイエローだ。わたしたちはたしかに不運だったが、鉢植えの薔薇よりかは少し軽快だ。そしてとつぜん気づいてしまう、無意味な羅列、比較、交換が大部分を占める生活の甘ったるい幸福に。逃げているので、気づいてしまう。わたしたちは体を結び合うような愚かなことはしないし、わるくなった足を切り捨てることもしない。ただ逃げていることに決めたのだ。



自由詩 わるいこと Copyright はるな 2015-02-23 16:34:51
notebook Home 戻る