猫砂
……とある蛙

猫砂に埋もれた二人の思い出は
一部は綺麗に乾涸らびて
形だけくっきりと存在している

一部は砂がかけられずに
異臭を発して、未だ砂の上の鎮座する。


軋む心と身体を引き摺って
ほんの七段の階段を
一つ一つ数えながら、
左足で一つ上の階段
麻痺した右足を引き摺りあげ
手摺りで身体を引っ張り上げ
一段分だけ引っ張り上げる

一つ
二つ三つ
四つ五つ六つ

最後の一段を引き上げるとき
右足を片手で押し上げる
ななぁ〜つ と

漸くたどり着いた行き先はトイレだ

二人でたどり着いたトイレは
思い出を捨てる猫砂が敷き詰められ
くっきりとしたものは何一つなく
それでも
それでも
行かなければならない場所で

ひとしきりの身震い、トイレを済ませ

軋む身体を支えながら
麻痺した右足を一段下ろし
手摺りに沿って左足を一段下ろす

一つ
二つ三つ
四つ五つ六つ
ななぁ〜つ

最後の一段を降りた後
君は怖いという
とても怖いという
励ます言葉もなく
また、薄暗いべっどのある部屋に入ってゆく

トイレにゆくたび
君の心は削られてゆく

今日は何曜日だっけ
病院へは明日行くの?
いや、金曜日だよ
明日何曜日だっけ

一日中何度も繰り返すやりとり

最後に一言

行きたくないよ病院なんて

また、ゆきたくない君を病院に連れて行く。






自由詩 猫砂 Copyright ……とある蛙 2015-02-17 10:43:30
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