呪雨
大覚アキラ

雨に打たれたカラスの羽根が
ネオンを映し虹色に光る
薄ら寒い十一月の夕暮れ
水たまりの泥水はねながら
走り去るドイツ車のテールランプ
怒号
罵声
横殴りの雨は
傘などものともせず
容赦なく身体に叩きつけ
私の細胞の一つ一つが
水分を含んで重さを増していくのを
為す術もなく味わっている
ああ
これは
いつか
どこかで見た光景だ
安物のビニール傘越しに見た
雨粒のレンズが映し出す
限りない魚眼レンズの世界
そう
気がつくと
私はいつもここにいる
銀色の鱗を纏った何万匹もの魚のように
巨大なスクランブル交差点を
行き来する人々の群れに
私は小さな声で
呪いの言葉をつぶやくのだ
雨よ
止むな
降り続けろ
いつまでも
いつまでも


自由詩 呪雨 Copyright 大覚アキラ 2005-02-05 00:58:51
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