ゴム風船
蒼木りん

あと1時間できょうの私は死ぬ

瞼が緞帳のように落ちてしまったら

もう死ぬしかない

そう思うと

込み上げる哀しさは

あした生まれると知っていても

今を

まだ生きたい



虚脱する

萎んだゴム風船

空に舞い上がることもできずに

割ろうにも割れない

地面にくっついたまま

微風にゆらされ

翻弄



ならば

お前こそは再び

いっぱいにいっぱいに膨らませて

風船としてもう一度存在させてあげよう

それ以外

お前の使命はないのだから

感傷を封印した死刑執行人

姥捨て山は

どこの家にもある


割ってやろう

その作業

萎んで捨てられるよりは

本望であろう


それでよいか

ゴム風船





未詩・独白 ゴム風船 Copyright 蒼木りん 2005-02-05 00:18:10
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