A DOG DAY
阿ト理恵


はじまりのまりを蹴りました。誰も傷つかないよう、わたしがきみをよびよせるたび、わたしは嘘つきになって、きみがきみのいるところだけが透明になってゆく。テトラポッドは波しぶきをくい止めて。非常口のひかる緑の人についてゆくつもりはない。あやとりは三回往復すれば終わってしまうし、翼をさずけられても、もう跳ぶのにもあきたし、夜空に拡声器を向けて「午前0時をお知らせします。」とささやく。忙/こころをなくし、忘/こころをなくし、情/こころがあおく、静/あおくたたかうりっしんべんスカイを間近で目撃したいメタフィジカルパンチ。おいとましますおいとまします、と、いしの呼吸のちゃおって、カレンダーから数字を消してみたところで、かばんのなかには、ひからびた笑いのくずばかり。未完成の毛糸のふくろには、うまれたての笑いを押しこんで、ふゆかけらをふるいおとすつもり。電話をかけるリスが電線をかけるみたいにね。F鉛筆で〈わ〉から〈ね〉へ、くるりんちょ。って書いてね。ねっ、ねっ、って、くるりんちょ。ねっ、しっぽもくるりん。たまにはね、今日は犬だからって、





初出2015・1・27静岡新聞投稿欄:選者/野村喜和夫氏



自由詩 A DOG DAY Copyright 阿ト理恵 2015-01-28 12:45:51
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