はしご
やまうちあつし
まよなかに目覚めて
眠れなくなることがある
ピストルでも撃とうと二階へ
ぼんやり階段を昇っていくと
どうしたことかいつまでもたどり着かない
奇妙に思いながらも昇り続けると
いつのまにか階段は
はしごに
しかもとうに天井を突き抜け
夜空へ向かって伸びている
訳もわからず昇り続ける
はりがねみたいに細い
はしごゆえ
手足の肉球にめりこんで痛い
とうとう正体があらわれてしまった
夜風にひげが靡いてしまった
「長靴を履いてくればよかった」
はしごは
際限なく夜空へ
もう明日の約束なんて気にしなくていい
何も知らずに昇り続ける
だって猫なんだから
はしごを
昇っていくだけのただの野良猫なんだから