占い師
オダ カズヒコ



百貨店の前で
手相を見ているおばちゃんがいる
人の手の皺の数に
虫眼鏡を当てて
その人の人生まで
当ててしまうのだそうだ

いっぺんだけ
占いの店に行ったことがある
女とだ

四条通りから
新京極を少し北に上がった場所に
その店はある

占い師はぼくらを見ると
どういうご関係?
と訊いてきた

ぼくらの関係を見抜けないほど
この占い師の目は曇っているのか?

何もかも知り尽くした関係だよ!

そう言ってやると
占い師はびっくりしていた
隣に座っていた女もびっくりしていた

ぼくはがっかりだ

期待すると大抵のことはがっかりする

占い師

女の優しさ
女のパンツの趣味
手のひらの皺の数

信用ならないものばかりだ

6年前だ
3年付き合った女が
占い師だったことがある

女は商売道具の虫眼鏡で
ぼくの手のひらの皺を真剣に見ている

何してる?
占ってるの
何を占ってる
いろいろ・・・

あなた34歳で結婚するわ
本当か!?
本当よ
じゃ、5年後か。誰とだよ?
分からないわ
分からないって、お前占い師だろ!

あれから6年経つ

3年前に
この女とは別れ
ぼくは今も独身だ

百貨店の前で
手相を見ているおばちゃんがいる
人の手の皺の数に
虫眼鏡を当て
その人の人生まで
いっぺんに当ててしまうのだそうだ

ぼくは35歳になった
いま付き合っている女も
やはり占い師だ

時々彼女は商売道具の虫眼鏡で
ぼくの手の皺を真剣に見ている

何してる?
占ってるの
何をだ?
色々よ・・・

あなた今年結婚するわ!
本当か!?
本当よ
誰とだよ?
わからないわ
わからないって、お前、占い師だろ!


自由詩 占い師 Copyright オダ カズヒコ 2015-01-23 02:30:43
notebook Home 戻る