ぼくのユニバースへ、ようこそ
乾 加津也

着床にも降りる雪の塩梅があるだろうか、ぼくから共有を剥いだ残りがぼくだとして、小さく息を潜めていたよフェミニン、ぼくは遺伝子と膝を交えて話したい、欠陥を謝りたい、のべつ幕なしか押し黙るのか日本語では表出不能と弄っていたら、遺伝子語の耳打ちがおととい来やがれ、ぼくは余白を全うしてしまいそう

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濡れる、ひとは濡れるものだった、都市が乾くほど濡れることは艶やかな速報(ニュース)、ひとは笑顔で泣きながらパルスがパルスとして受け入れてもらうための、指先の受容体でつながり、つながった液晶を喜びのあまり縦横無尽に引っ掻く、すると心が濡れてしまう、ひとはそこはかとない、湖底を露わにした馬の目に似て無性に明日を担保したくなる

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凍(つめ)たい街の夜を歩く、マッチ売りの少女(註1)の幸せな屍に出会う、名もない少女に楽しい空想をもたらした炎、ぼくは墨跡を流し流し空想する、少女自身で、明るいメロディに生まれたのかしら、紅いマッチ棒が少女の五線譜(からだ)に小気味よく散る刹那、かみんぐ、かみんぐ、えばーらすと、かみんぐ

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愛の象徴(しるし)に惑う薔薇の、色めき香り傷つけるさだめ、いずれマリーはクオリアを捨てて部屋をでて、思いのたけを叫ぶだろう(註2)、ひとよ、大学講堂を燃やし探査衛星であばら骨を尋ねる愉快なひとよ、ミルキーウェイを喝破し、指を鎮め、はるかな魂の黄昏を夢みる空想家(ならずもの)よ

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ユニバースは宇宙、見渡す限りこれより大きな言葉はなかったから、金字塔も比喩として、ぼくのユニバースも比喩、ぼくは赴くままに自分の知恵の輪を磨いている、それならなぜそんなことを言ったの、かかわり、ほどく、あなたの咎めに傷つきたくて、かみんぐ、かみんぐ、えばーらすと、かみんぐほーむ









註1 ハンス・クリスチャン・アンデルセン著 マッチ売りの少女
註2 マリーの部屋 フランク・ジャクソンの思考実験


(る さんの作品に触発されて)


自由詩 ぼくのユニバースへ、ようこそ Copyright 乾 加津也 2014-12-21 00:31:11
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