雪国の男子
ただのみきや

例年にない大雪で
なれない除雪に悩む市民をよそに
ひたすらアパートの除雪に精を出す
あいつ

――大丈夫 おれ 雪国育ちだから


観測史上初を連日更新する中
近所の家々をまわり除雪に励む
礼を言われれば照れ笑いで答える
あいつ

――大丈夫 おれ 雪国育ちだから


交通機関の麻痺が景気に暗い影を落としたころ
完全防備にかんじき姿
突如現れる必殺除雪人 テレビに取り上げられた
あいつ

――大丈夫です おれ 雪国育ちですから


悪夢のようなドカ雪は途絶えることなく七月に至り
ビクトリアの滝の氷瀑祭り雪化粧のモアイ像
ラジオで聞きながら湯気を立て立てスコップをふるう
あいつ

……ダイジョウブ オレ ユキグニソダチダカラ……


「神の裁き」そんな言葉が囁かれて早二年
巨大な雪の山脈と化した日本列島 白い沈黙の世界 微かに
動く影ひとつ 黙々とスカイツリーの先っぽを掘り出している
あいつ

……そういえば実家にいたころ
    除雪の手伝い したことなかったなぁ……




                 《雪国の男子:2014年12月20日》






自由詩 雪国の男子 Copyright ただのみきや 2014-12-20 20:38:02
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