夕暮れのLEDサイン
番田 


今日僕は投票に行かずに、ビデオの編集作業に明け暮れていた。VHSに入っているデータをパソコンに移すための、重要な作業だった。日が暮れていくとき毎朝駅前でチラシを配っていた立候補者のことを、少しだけ思い出した。彼は僕に微笑みながら話しかけてきたのを、何となく覚えている。だけど僕にはやるべき作業が、残っていた。貴重な時間だから投票に行くことはできないのだと、硬く、心に決めていた。しかし気がつけば、そんな風にして、データも移すこともできないまま一日が終わってしまった。やはり投票に行っておけば良かったと暗がりの中で少しだけ思った。パソコンにデータを移すためのUSBのキットのようなものがアマゾンで調べるとあるらしいので買ってみようと考えた。そして、頭を冷やして街に向かういつもの道を歩き出した。公園の脇を抜ける道を歩いているとネコを見かけた。なんだか救われたような気がした。


散文(批評随筆小説等) 夕暮れのLEDサイン Copyright 番田  2014-12-15 00:25:42
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