ぼくには世界を救う力がない。でも世界を変えたいと必死に思う。
南無一
世界は敵意と悪意で充ちている
暗黒の嘴で抉り喰われる民族とは 何か?
殺戮と暴力と攻撃が融和を汚辱する
固執する差別が残忍な狂気を産み
権力という傲慢の手袋を嵌めて扼殺を繰り返す
憎悪の布に覆われた悲しみがさらに深い憎悪を産み落とす
復讐の連鎖がもたらすものは荒廃した未来だけだ
神は灼熱の砂漠に干乾びた屍体を晒している
パンドラの罅割れた壺の底に張りついた希望を
取り出せるものは誰もいない
絶望? その文字を書きつける藁半紙さえない
嘆きを超えた悲しみの深淵に佇む者たちの
その指先のささくれさえ見ることができない
黒焦げの呻きに満ちた砂地に吹く風の夢には色彩がない
破壊された瓦礫のうえを這う光の声には歌がない
ただひたすらに暗みへと傾斜してゆく世界に
呪祖の唾を 吐きつけろ
殺すことが快感とさえなる悪夢に囚われた兵士に
侮蔑の刃を 突きつけろ
世界は偽善と妬みに充ちている
漆黒の世界と虚白の世界
二重螺旋の捩れた虚構の縄梯子を握り締め
落下の恐怖に怯え 骨ばった膝が怯んでいる
毎朝、うすっぺらな紙の一頁に
悲惨も 残虐も 象形文字のごとく整然と並んでいる
日常性とは 無関心でできている
閉ざされたサルの 目と 口と 耳と
憐憫とは いつも乾いた優しさで包まれている
弾丸の飛ばない 遠方から
錆びた贋金を懐に抱いて 腐肉を喰らい 満腹の虚偽を膨らませるもの
世界は汚辱のウイルスに浸食されている
過剰生産、過剰消費、過剰廃棄という のっぺらぼうの戦場で
絶え間なく射殺され続ける精神
その地平線には ただ欲望という ねっとりと湿った風が吹いている
偽りの幸福の過剰のなかで 萎びた精神を埋葬する場所もない
照射する光は音もなく捩れ 耀きさえ見えない
世界は ただひたすら 空想する
色のない風の夢に 虹をかけよう と
世界は ただひたすら 幻想する
歌を失くした光の声に 音符をつけよう と
詩の企みのなかで 世界は世界を創造する