Love Letter
竹森

「ようやく」

女の子の目蓋はどこまでも  この丘に取り残されて馬と
落ちていく女の子の目蓋は  羊は交尾を始めるのだろう
どこまでも落ちていく2か  か乾いたパンの形の雲と乾
ら1が引かれて0が残る女  いたパンの色が暮れ滲む空
の子の目蓋は永遠と眼球を  の下まずはキスからはじめ
抱擁する/女の子の唇が落  てみてはどうだろうか手は
ちていく2から1が引かれ  握りようがないし/2から
て0が残る十月の桜の木の  1を引いて0になる唇を私
下で枯れ葉の地面を踏むみ  は二匹に差し上げよう私は
たく押してみたなら液体が  あの子の唇を宝石箱にしま
滲み出てくる唇その丘の下  っていたのだ水を欲しがる
には学校が溢れ出して胞子  くせに飲めなくて語らない
を飛ばさない女の子もいて  接吻によってしか語らない

唇を失くした女の子はもう星の数を数えていない。月の数は数えなくてもわかる。馬と羊のどちらにあの子の上唇をやり、どちらにあの子の下唇をやるかは、どちらが雄でどちらが雌か決める様なもの。目蓋のどこまでも落ちていくその長さで。満月と地球がどこかの眼窩にはまってしまうその落差で。

おかのうえに
とりのこされた
どうぶつたちのあいだで
ほしをつなぐゆうぎが
(ようやく)はやりだして
わたしは ひとまわりして
ほしぼしのしんわ
(それは)かれらのむかしばなし
が かたられるのを(ようやく)きく
(それは)
おもしろくて
みみのあなが ふくらみ
(ようやく)
それをわらう
にんげんがいない

いちしゅぞくいっぴきのこされた
おやのしんわと むすこのしんわは
どこまでもふかいみぞに だんぜつされていた
ふりかえるだけで (それは) すぐ そこ なのに

おかのうえにとりのこされた
えいえんのふぐしゃたちは
えいえんにつづく
よぞらのまんちょうで
おかのうえにしきつめられ
いずれじしんもおかとなり
だれかのおかのしたじきとなり

せいざのえいゆうたちが
かつてしょうじょががっこうとよんだ
ぼせきのうえをかっそうする

(それは)

(ようやく)





「要約」

道端に吐き捨てられたガムを拾った老人はそれを口に含んだ。聞くところによると、昨日の落雷で家が全焼してしまったのだそうだ。どうやらこの街では毎夜、一か所に、それも決まって屋根の上に、雷が落ちるらしい。晴れた夜空のどこから雷が落ちてくるのか、今度訊いてみよう。と、私は道端に吐き捨てられたガムを拾って口に含んだ。今度老人に会ったら、このガムをプレゼントしてみよう。
これから私はガムを噛み続ける訓練をしなければならない。これから老人は青と訊かれたら赤と答える訓練をしなければならない。赤と訊かれない街ですべての血の色は青いのだろうか。それともこの街では一度も血の流れたことがないのだろうか。要約された文章から再びあなたが要領良く神話を抜き出し、ポチと名付けられた猫が形を変えながら一本の尻尾ばかりを強調している。あなたが「地球」と月にひとさし指を立てれば、青い空から漆黒の矢が一本まっすぐに降り落ちてくる。あなたが指さした地球は、いつだって、おそらく、ちょうど、ここいらへん。

やがて、花が乾いたパンを欲するまで、色彩の明度を落としながら。





「洋訳」

Far どこまで ふくれあがるのかな あなたの がんきゅう
Far なめても とけたりしないよね あめだまと ちがうし
lala あおい びーだまみたい あなたの がんきゅう
lala かいだんを けんちくするのです にほんのゆびを あるかせるため
ごほんあるゆびのなかで いちばんみだらなゆびは どれ
ふぁあ どうでもいいや あくびをしながら
Ah いっぽんずつ たおれていった

みおくった ゆうぐれていくそらは
いつだって さいごで
いつだって なつかしい

  (本物の天使か偽物の天使か、
  (見分ける方法が一つだけある。
  (それは舞い降りてくる彼らを、
  (掌でそっと掬ってみることさ。
  (何の感触もなくすり抜けていけば天使、
  (皮膚が声を発する様だったら、それは粉雪さ。

  (そうね、安心して。
  (机の上に置いてあるのはナイフでもピストルでもないし、
  (ていうかそんなの非現実的だよね。
  (あのね、リポビタンDの空き瓶が、転がっているんだよ、
  (つけっぱなしの、パソコンの前に。



「空の色は何色?」「水色」と答え、見上げる内に、空は夕暮れ


「おやすみ」を告げて長いまばたきをした後に、君が言う、「おはよう」



Far・・・






ふぁあ・・・


自由詩 Love Letter Copyright 竹森 2014-12-13 17:56:20
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