夜へ 虹へ
木立 悟
鉄が踊る
影は遅れる
枝が踊る
血を流す
花のような葉の
血を流す
器からあふれ出る熱
頬と野外の違いから
不明の土の窪みから
壁と炎が立ち上がるのを見る
曇は星に到くことなく
緑の虹を置いてゆく
蒼の底の ふたつの白
鏡からあふれる指の白
灰の傘をすぼめるように
空は急に縦に遠のき
狭い狭い狭い径を
はじまりと終わりに満たしてゆく
嘴を持たない
むらさきの目に覆われた鳥が
未だ明けない空を見ている
むらさきを梳くむらさきを
見つめている
坂道の上の
荒れた空から
色と声は降りつづく
夜の虹へ
夜の虹へ降りそそぐ