橋・渡らない
イナエ

人生に設定した目的に向け 
一直線に生きていける人はあるまい
散歩先に目的地を設定しても
一直線に歩いて行くことはない

前方の橋
大型犬を連れた女性がこちらに来る
わたしは 当然のように
橋の手前で左に曲がり土手を歩く

よくあることだ 
前から来る女性を信用しないのではない
女性だけなら 
橋の上ですれ違うことを選ぶ

あの犬
こちらを眺めて友情を示したあの大きな犬
橋の上ですれ違うとき気分を変えないか 
そのとき犬を連れている女性は
犬をコントロールできるか

 危険の多い人生だった
 右にも左にも曲がれないときもあった
 ひたすら身をかがめ背を低くして
 風を避け渡った尾根もあった
 三点支持で登る岩場
 一点の手掛かりを見付けることさえ
 困難なときもあった

散歩は穏やかな道で良い 
危険は道は避けて迂回すれば良い
鰐も蛇もいないとしても 
川に逃げることの出来ない橋の上

三点支持 ロッククライミングの基本、
    四肢のうち一つだけ岩場を離して移動させ
    他は手掛かり足場を確保していること


自由詩 橋・渡らない Copyright イナエ 2014-12-02 12:12:54
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