葉leaf




霧が鳴いている
遠くへ存在を送るためでなく
内側にどこまでも響かせるように
霧が水の衝動を鳴いている
霧の中に沈む街並み
の中に沈み込む人々
霧が覆い隠すのは風景ではない
人々の明るいまなざしだ
人々はまなざしを濃くすることで
身体にまとわりついた他者の痕跡をそぎ落とす
霧は人々を新しい生命として浮き立たせる
近くに限られることで
遠くをはっきり失うことで
人々は自らの血そのものとなり
脈打ち、めぐり、証明する
霧が鳴いている
人々の肥大した耳は
霧が光と陰との相克できしむ音を聞き
その僅かに内側へと反響する
静止への欲望を共有する


自由詩Copyright 葉leaf 2014-11-29 04:42:37
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