安楽死
竹森

様々な矛盾が、私の森で、死体を漁る夜。腿に切り傷を、CDに回転を。サイコロの目が開いては閉じて、0から6を行き来している。僕はウトウトしながら、君の名前を呼んだ。だからきっと、どこかのアパートで、肉体としての君の目が開いて、それでいて、君はまだ眠っていて。


僕は何度だって安楽な詩を、疲れ切った君に求める。


深夜3時のコンビニエンスストアに、
マラカスが取り残されたカラオケボックスに、
シャンプーを買い忘れた独り身の孤独に、
煙草をやめた後輩の静かな苛立ちに、
メールボックスに、すき家の紅ショウガに、
ありがとうに、おかえりなさいに、


―――目を覚ました?


飛行機が不時着して、皆が助かって、満足しましたか?明日から産まれる子供は一人残らず神様で、それは王女様から王子ではなく王様が産まれるという事で、世界の終わりの始まりなんですってね。スーパーの刺身が半額になっていました。ホカホカのご飯と一緒に食べます。独り言に抵抗が無くなっていく事ばかりに意識を取られて、僕は、一人で居る事に抵抗を感じなくなっていった事には気が付かなかったのでした。


―――その様に閉じられる、一冊の書物があるとして。


ねえ。語られる私たちは何処までいってもフィクションでしかないの?
それでいて語られなければフィクションにすらなれないの?
もしも僕に友達や恋人がいたら、きっと別の事を言っていた?


(似ている、似ていない、
(ばかり、結局、僕ら、
(居るのか、居ないのか、
(明らかに、したくなかった。
(踏切を、また、踏切を、
(何事もなく。

(琥珀色した、
(鼓膜が一粒、
(滴り落ちる。
(仏頂面の君を笑わせる、
(それが僕の、
(最後の特技だ。


大学のラグビー部で万年補欠であるケイトは、パンクした自転車を肩に抱えて、かき氷をスプーンで突ついた様な、まだ新鮮な音の鳴る芝生の上を軽快なステップで歩いていた、から始まる物語を綴ろうとしてやめる。
ここの芝生はいつだって深夜3時だ。危険な予感がするだけで何も起こらない。スマートフォンにはいつだって、叶わなかった願いを綴る君たちが映っている。


それから、
時は流れて、
僕ら、蝉や鼠だったらもうとっくに死んでいるよ。
いつか喩えられた者たちが、
いつか押し付けられたあだ名たちが、
何らかの意味が込められた、
あなたの名前以上には、
あなたを責める事も、もう、ないでしょう。
もしもあなたが望まれて、
産まれてきた、とでも、言うのならば。


自由詩 安楽死 Copyright 竹森 2014-11-23 18:05:30
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