弱さもずるさも
永乃ゆち





彼を好きだった
弱さもずるさも

最後の日には
責められない笑顔に
悲しみも怒りも伝える事すらできず
ただ
ひたすら爪を噛みながら
ありがとうとだけ言った

彼のあばら骨の一本は
きっとわたしの体にはなく
彼女にあるというだけの事だろう

彼は最後まで優しかったから
泣けもしないで
怒りも悲しみも
どこへも着地できずに
飲み込んでしまったので
喉は焼けるように痛かった


責められない笑顔
責められない曖昧
責められない弱さ
責められない卑怯


きっと誰もが持っていて
いつも誰かが傷付いている

月が隠れたら
真っ暗な部屋の中で
少しだけ
泣こうと思う





自由詩 弱さもずるさも Copyright 永乃ゆち 2014-11-23 11:00:07
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