けむり
ドクダミ五十号

およそ六年間
父親だった男が
土曜の深夜
死んだ

涙は出なかったが
哀れだとは思う

涙の出ない目を
えぐり出して
記憶の眼窩の底
かつて投影された
倒立画像を探す
淡い白とハイライトの無い

火葬はたったの数人で
当日は良く晴れていて
煙突から煙が
最後の熱でゆらめきながら
空を登り
ほどけてゆくのが
よく見えたと言う

オヤジ
生きたな
もう偏在している
だから悲しむな
俺も悲しみはしない


自由詩 けむり Copyright ドクダミ五十号 2014-11-21 15:57:57
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