映画
北橋勇輝

よく通う小松座の前で
あの子が煙草を吸った
白い息を溜め込んで
何か言いたげな顔をした

適当に並べられた蕾を見て
どれが冬に咲く花か分かるか

マフラーに顔を少しだけ埋めて
かじかんだ手を元に戻そう
冬の朝がやけに辛いのは
君の制服が綺麗だから

子供たちがはしゃぐ声に
耳を澄まして ペダルを踏んで
君といつまでも会話出来ないのは
僕が喫煙席に行けないから
君と僕が会話出来ないのは
僕が観る映画と君が観る映画が
少し違うものだから

ガラスに流れる朝露が
透明な冬を映してた
何も起こらない映画を
暗い部屋で一人観ていた
君と僕が小松座の前で
鉢合わせしたときも
白い息吐きながらすれ違う
目を合わせずに


自由詩 映画 Copyright 北橋勇輝 2014-11-20 07:30:54
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