友だちの友だちとしらない友だち
さわ田マヨネ

友人の友人っているよね
ぽこぽこいるよね
かおもみたこともない人

もちろん友人の友人といっても
共通の友人だっているし
いるしぼくだって
ぼくだって友人にとっての友人なんだけど
ある種おなじ地平にいるんだけど
だからってぼくもその人と
かおもしらないその人と
いつか友だちになれる
という風には大してなってなくて
それで悲しくなったりもしない

しらない友人の友人に会う
という行為の面白いところは
いままでしらなかった友人の一面が
そんな友人の友人づたいにかいま見えてくるところだ
アイロンをかけたシャツに
袖をとおすようなパリッとした
すこし新鮮なてざわりの友人が
たち現れたりするのだろう

×
×
×
×

いままででいちばんスパイシーな思い出をおしえてほしい、僕の友人である伊田峰の地元の友だちだというしょもこさんから、そうたずねられいったい何をためされているのだと思った 、僕としょもこさんはそのときいってしまえば出会いたてで、そんなほっかほかな僕がとっさにくりだしたのは、幼少期にガンプラを庭先に埋めた話だったんだけど、しょもこさんピクリともしない 、いやわらえよ、ばかなガキだった僕は手のひらサイズのガンダムがなんか土の中で成長して大きくなるんじゃないかって思ってたんだ... 盛大にはずしててほら、ミネが、僕は伊田峰のことミネって呼ぶんだけど、ミネがなんか萎縮しているじゃないか、 どうすんだよ、それでもしょもこさんはそんなミネをみても堂々としていて、 べつにおろおろなんてしなくて、平常運転みたいな風で、だからもしかしたらしょもこさんといるときのミネはいつもこんな感じかもしれなくて、だとしたら向こうとしてはありふれてるんだけど、こちら側には非日常な光景だけがのびていた、 ぺたぺたとした足どりで、 軽くしゃべった感じ 僕としょもこさんにはあまり共通項がみつけられなかったので 、それから僕たちお互いの伊田峰トークをはじめる、 ミネはしょもこさんからカマターとよばれていた、なんだそれって思うけど、 それは昔ミネが釜揚げうどんにバターをかけて食べていたことから「釜揚げバター」の称号を得て、それがちょっと短くなったという、いわゆるエピソード由来のあだ名だった 、かさぶたがはがされていくのをみつめているような そんなまなざしでもって、僕はしょもこさんから伊田峰のしらない部分をし る、 僕としょもこさんに挟まれて気恥ずかしそうに座っている伊田峰は、「ミネ」と「カマター」のハーフ&ハーフみたいな状態だ 、お互いの領分からお互いにとっての伊田峰がトークとしてひときれずつこだしに差し出されていく、それをみんなでパクついていた、 なかばピザの権化と化していた、僕の目にむすばれていく伊田峰の像には、 だからどうしようもなくパーティーの予感がうずまいていて、耳をすませば喧騒と呼んでしまいたかった、カオスあるいは非日常そういったものの総称としてのおまつり、その足音が聞こえてくるような 、そういう、 逆に静かな気分になってしまいそうな、 そんなしずけさの中に知らない人がいるみたいで、 ただしょもこさんから織りなされていくカマターエピソードには、なんだよやっぱりぜんぜんスパイシーじゃないじゃん!っていう、 なんだよっていう、そういう 、いつものミネのちょっと気弱だけど優しいとこが滲みでていて 、結局そういったとこに落ちついていく訳でして、 ああ やっぱりミネはミネなんだなって、そう思ったよ伊田峰く ん、という



そんなことがあったんだけれど、後日ミネからこの日についての感想を求められて、ほんとはしょもこさんのことちょっと苦手だったのに、そんなこと言えるわけもなく、楽しかったしいい人だねって、そう言っておいた。
ミネはしょもこさんのことを友人って紹介してきたけど、さりげなくくされ縁風を装ってたけれど、友人というものがなんだか、しっくりとはおさまってくれなかった。
そもそもカマターとしての伊田峰は、しょもこさんのことがすきなのだと思う。
そのことに大した根拠は無いんだけれど、でもなんとなくわかる。
わかってしまうくらいには、僕はちゃんとミネの友だちなのだ。


それから1年ちょっとくらいしてミネには彼女ができる。
バイト先のかわいらしい後輩の女の子で、
その子は伊田峰のことまさくんって呼んでいた。
思ってたのとはちがう系統の人で、
僕にはそれがなんだかショックだった。
もっとこう、
おねえさん系じゃないのかよ、
ということをさけんでしまいたかった。
とりあえず僕は僕にとってのミネ像を、
早急につくりなおさなければならなくなっていた。
すこしあたふたしてしまったのだと思う。
今まで出会ったことのある「ミネ」「カマター」「まさくん」を合体させて、
そうやってベッドの上にねころがって、
僕の脳内で「イタミネーター」という存在がうまれる。
うまれたのはいいんだけど、
そのイタミネーターがあまりにもぽんこつだ。
ためしに好きなアイドルについてたずねてみると、
イタミネーターはウウゥって変にどもってしまうし、
ウイーーーーンて変な機械音が鳴りあがるばかりでそもそもちゃんと歩けない。
なにかにすごく似ている気がして、
だからなかなか憎めないでいたんだけど、
それがいつか庭先に埋めた、
ガンプラの面影をひきずっていることにちょっとして気付く。
出会った頃のフォルムからは大きく崩れてしまっているだろう、
地中に埋まったままのそいつを、
僕はもう手にとることができないでいた。


ひっかかってたというか、気にはなっていたんだと思う。
あれからなんとなく釜あげバターを一人でつくって食べたことがあった。
自作した釜あげバターはまずくはなくて、なんか予想以上のまずくなさで、そしてびっくりするくらい大したことなくて、大したことなさすぎで、それを誰かに話したいようで、もうずっとかかえこんでいる。
そのことでミネをいじるのは、妙にはばかられてしまった。
そこは僕のいるテリトリーじゃないし、僕の領土に築くべきものでもないというか、ミネに対して僕が請け負っている役割はそこじゃないんだって、そんなことを、それは誰でもいい誰かに 話してしまいたい。
僕についてあまり好意的ではないんだろうけど、
そのことについてはしょもこさん、まっすぐに肯定してくれる気がした 。
気がしたよ。


自由詩 友だちの友だちとしらない友だち Copyright さわ田マヨネ 2014-11-13 16:06:38
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